クラシックマウスを作ろう!(1) ~目標設定と方針~
初めましての方は初めまして.
そうでない方はお世話になっております.
お久しぶりです,最近はマウスから離れているぱわぷろです.
今回からシリーズものとしてクラシックマウスを作る話をしていきたいと思います.
以前に前後編の記事を投稿しようとして死にかけた覚えがありますが,今回は完走できるのか???
と先の不安を吐露しつつ,細々とやっていって完結させたい….
目次は以下のように.
はじめに
このシリーズを始めようと思った経緯の話なので興味ない方は飛ばして大丈夫です.
始まりは簡単です.
「自分がやったことは何かしらの形で出力しなければならない」
これは僕自身がマイクロマウスに取り組む上で1番大事にしている考えです.
先輩から手取り足取り教わってマウスに触れて,他の競技者に助けてもらいながらDCマウスを開発・完走させることができた以上,ぼくは何かを残さなければならない.
それが教えてくれた方々に報いることである,と思っています.
また,別の観点の理由が1つあります.
「マイクロマウスの新規参入を増やしたい」
1年で競技全体のレベルが上がるのが目に見えて分かり,数年も経てば製作に関するノウハウは刻一刻と変わる世界です.(マイクロマウスに限らず他のロボコンでも顕著ですが…)
そこでそこらの馬の骨がやったことではありますが,自分がやってきた事を公開することで
「あ,この程度でいいのか」
となってくれれば新規参入もしやすいのかなとか思ったりしたわけです.
殴るマトでも,反面教師でも,好きなように使ってください.
(個人的にはやったことをまとめるだけで自分のためにはなる)
自分の製作上,1番心が折れそうになったのは
「今やっていることが完成に近付ける道なのか分からない不安が襲ってくる事」でした.しかし,現代では至る所に道標があります.
DCモータを使ったマイクロマウス入門① – RT Robot Shop Blog
この他にも様々な方がブログやSlideShareでそのノウハウを公開しています.
…これ僕何も書かないでいいのでは???
ってなりますが適宜引用しながら,思考と試行の結果を混ぜて書いていこうと思います.
目標設定
さて,本題です.
マイクロマウスは「ルールの根本が変わらないロボコン」という一面を持っています.
これは目標設定において非常に大きな意味を持ちます.
つまり,長期にわたる開発目標を設定しやすい,ということです.
ですが個人としては「1年間で達成できる目標」と「長期にわたる目標」を立てる事をお勧めします.
例として自分の1年目が終わった時点の目標を上げます.
長期 「5年以内でのDCマウス完走」
2年目 => マイコンの変更(LPC -> RX )とPCBへの挑戦
3年目 => 表面実装への挑戦とDCマウスプロトの作成,制御法の確立
4年目 => マイコンの変更(RX -> STM)と吸引搭載
今振り返るとかなり臆病な目標設定をしていたな…と感じます.
もう少し調べてれば色々と省略できたのにな…今言っても後の祭りですが.
長期の目標はともかく、年間の目的を作る理由としては「とにかく大会に出るため」です.
大会で学ぶことは多いですし,なにより納期があると自分にも気合いが入るってもんです.あと,要素が多いので完璧を目指すとそこでドハマりして全体の進捗が出なくなりやすいです.
このシリーズでは「とにかく動くマウスを作る事」を目標にしています.
所詮,どこぞの馬の骨の話ですし,動くところまで持っていけば先人のブログを理解できるようになるのでそれ以降はやる気次第ということで.
方針
本来のロボット製作では要求される動きをモデリングして,必要な動きを導出.
その動きをどのような機構で再現するかが方針となります.
しかし,マイクロマウスは差動二輪(または四輪)という形式がほとんどで,ステアリングやオムニホイールには挑戦する人はいても主流とは言えません.
よって,ここでは「如何にして差動二輪式DCマウスを開発するか」に重きを置きます.
そのために、要素技術の追求よりも全体の完成を優先します.ゆえに「慣れていない分野に関しては先人に甘える」という開発方針とします.
(このシリーズの説明はほぼすべて先人に甘えます)
素子の選定をするにしても、攻めた設計をするにしても、何かの基準が必要です.
全部言いなりにやるのが気に食わない人もいると思います.
それでもいいです.モータ変えても良し、IC変えても良し.ただ、そうだとしても
「どれくらいのスペックで動かしているのか?」
これは知っておいて損はないです.
実はマイクロマウスは全日本大会が終わると公式HPにてデータシートが公開されます.
http://www.ntf.or.jp/mouse/micromouse2019/result/mm2019recode_v104.pdf
このpdfの後半はテクニカルシートとなっており、各機体のモータやドライバ、センサ、機体サイズなどが記載されています.
自分の場合は、ここでよく見かけるものを基準にして自作マウスの参考にしていました.
ハードをコピー品にした所ですぐに上位に行けるほど甘くないのでそれでいいと思っています.
製作の手順を考える
ロボットの製作スケジュールについては知人が書いているので そこを参照してください.
ロボットでは以下の要素で分担することが多いです.
・機械設計
・回路設計
・プログラミング
しかし、マイクロマウスを始めとした小型ロボットではこれが少し難しくなってきます.簡単な事です.
機体の重量バランスにおける基板の割合が大きくなります.
基板の素子が機械部品と干渉します.
素子やバッテリーの配置で重心位置が変わります.
以上のように、機械と回路がかなり近いものになってきます.
プログラムはまだ分かれていますが、特殊な補正のためには設計段階でセンサ配置決めないといけなかったり、壁センサの角度も関わってきます.
何が言いたいかというと
「全部、並列に進めた方が結果的に速くなる」
って事です.(少なくとも僕はそうでした)
自分の場合は突っかかりは機械設計でしたが、機械設計が終わるころには回路設計が終わって基板を発注していました.
ただ、その合間を縫ってプログラムは書いた方がいいと思います.
特に探索系は今までの積立が無いと辛いです.
足立法については以下のブログをお勧めします.
個人的には、フレッシュマンと呼ばれる人に迷路探索を教えるならこれが1番わかりやすいと思っています.
まぁ全部進めながら機械飽きた→回路飽きた→プログラム飽きた→機械…の無限サイクルですすめるのが精神衛生上、良いと思います.
コアパーツを定める
これも設計手法としていかがなものか…とは思いますが,小さいものでは
「ある部品を使う前提で設計する」という方法も有効な場面があります.
前述で,年間の目標を立てる事も推奨していましたがその目標として
「今年はこの部品を使ってみる!」ってのもアリです.
人間は選択肢が多くなると吟味することを辞めます.
さっさと決めて選択肢を少なくして,手を動かす段階に移行しましょうってのが
この手法のポイントです.製作のサイクルを高速でぶん回しましょう.
そこで使えるのがテクニカルシートです.
ここで見るとDCモータはFaulHaber or Maxonが多いです.
割合で考えるとFaulHaberの1717が妥当なラインでしょう.
また,モタドラはTIのDRVシリーズかTOSHIBAのTBシリーズが多い.
ジャイロはInvensenseのデジタルジャイロが多い.
自分の場合はこの辺りをコアパーツと定めています.
モータ(1717T003SR),モタドラ(TB6612FNG),ジャイロ(ICM20689)ですね.
ココだけは入手性や最大出力を考慮して先に選定しました.
ここまで決めると結構回路の全体像も見えてくるし,機械設計もやりやくなります.
(モタドラを決める必要があるかは甚だ疑問ですが…ノリです)
1回目なのでこの辺で勘弁してください.
文字ばっかりで疲れたと思いますが,これからは図も増やしていきたいですね.
次回は「足回りについての検討」の予定です.
…これ本当に最後までいけるのか???