クラシックマウスを作ろう!(9)〜電源回路とモタドラ回路〜
初めましての方は初めまして、
そうでない方はお疲れ様です。
外が寒くて朝の気怠さが増してきたぱわぷろです。
前回に引き続き、今回は電源回路とモタドラ回路という電流量が大きい部分の話です。具体性よりは考え方の話がメインになるかと思います。
目次は次の通りです。
電源ってどうやって選ぶ?
さて、簡単に電源と言うと皆さんは何を思いつくのでしょうか?
一般的なものならアルカリ電池、コンセントだったり、電子工作に入るとリチウム系電池や鉛蓄電池が出てきたりしますね。
「じゃあ、何を基準に選べばいいの?」
ってなると思うので少し考えてみます。
お堅く言えば次の3点です。
- 供給電圧
- 最大出力電流
- 持ち時間
…みんな使ってるとか、手元にあるからってのも信頼性や入手性が高いわけなので重要ですが、性能という面で選ぶと上記が大事かと思います。
「良い悪い」という問題ではなく「向き不向き」な問題なのでご注意ください。
電池自体の概要については次のリンクを参照してください。
以下はマイクロマウスにおける話に特化して述べます。
まず供給電圧ですが、駆動電圧以下の電源はやめときなさいって事ですね。昇圧DCDCを使う手段はありますが、電圧は上げるより下げる方が楽です。ハードルと一緒です。Lipoなら1セルで3.7V、アルカリ乾電池の単4だと1.2Vとかある程度決まっているので目安を調べましょう。クラシックマウスだとLipoの2セル、マイクロマウスではLipoの1セルのイメージです。
次に最大出力電流ですね。これは
ロボットが1番エネルギーを使うのはどのタイミングか?
を考えるといいです。
もちろん、加減速時です。等速状態では(簡易な理論上)電流は消費していないはずです。
新幹線やハイブリッド車には回生ブレーキなどがありますが、まあ加速が1番電流使うって事だけ覚えて下さい。
この一瞬がめちゃくちゃ電流使います。
しかし、電源も無限に電流を流せるわけではないです。
600mAhで20CのLipoだと最大瞬間電流は0.6×20=12Aぐらい吐ける計算になります。
もちろん、常時12A吐き続けるのは難しいですし、加減速時以外ではそこまでの電流は必要ないので消費量と供給量のバランスで考える必要があります。デカいLipoは重いので機体性能にも関わってきますし、ここは自分がどこまで納得できるかのせめぎ合いだと思います。
最後に持ち時間です。1秒間しか動かない機体じゃ何もできないですね。
クラシックマウスなら5分、マイクロマウスなら10分の稼働時間が必要です。(NTF競技規定より)
まあ実際はメンテナンスの時間も含めているので、持ち時間中ずっと動いている機体は珍しいですが…
それでも、探索や最短走行4回含めて走れるように選定すべきですね。安いLipoを大量に購入して選定している方もいらっしゃるぐらいです。
以上の上記3つのような事を考えて、重さとのバランスで決めることが正しいのですが…横着して他人様がLipo2cellを使ってたので2cellにしている自分がいます。
電流量は250mAhとかだったはず(ラベルを剥がしたのでもう分からない…)。
Lipoは危険、危険だと言われてますが、基本的に電池は正しく扱わないと危険なものです。単四電池でもニッケル水素電池をヤスリ掛けして12本直列に繋いだパックを作って14.4Vを生成してたら危険ですよ。(自分もステッパー作ったころはやってました)
あまりに危険なので廃止しました。(そもそも初心者に電池をヤスリ掛けさせるって危険なんてレベルじゃない…)
物は正しく扱いましょうね。
電圧や電流を見積もる
ではでは電源に必要な電圧や電流ってどうやって考えるの?って話ですね。
感覚的には欲しい電流が流せるような電圧にすればいいかと思います。
まずマイコンやICですが駆動電圧を見ると大体は3.3V, 5Vたまに1.8Vぐらいかと思います。電磁弁やソレノイドならアホみたいな高電圧必要でしょうが今回は考えません。そして、電圧は下げるのは簡単なのでこれより高ければとりあえずはヨシと。
では必要な電流で考えるとします。
1番電流を消費する場所、すなわちモーターがネックになるわけです。詳細はモデリングの回で述べると思いますが、モーターが出したい加速度が分かると必要な電流量が分かります。この電流を流せるような電圧であればとりあえずOKです。
モーターの定格電圧は365日24時間安定稼働させるための電圧なのであまり気にしなくて良いです。ロボットコンペや諸々で言われてる
「定格(電圧)は破ってヨシww」
の理由はモーターにとって電圧など重要ではないからです。
モーターがお亡くなりになるのは主に発熱による内部コイルの断線、ギアヘッドがついている場合は高トルクによるギアの歪み等でしょうかね…。
発熱は電流が2乗で効いてくるので電流さえ守ればとりあえず、ヨシ!
…まあ電流もピーク値だと定格破ってるだろうけど。
マイコンや発光回路等のロジック部分での消費電流はせいぜい2〜300mAぐらいではないでしょうか?
もちろん、回路や処理量、使うICによって異なりますがモータに比べれば結構少ないはずです。
それで電圧や電流の要求仕様が分かるので電源を選べるはずです。
自分はスーパーラジコンなどのラジコン通販を利用して買っています。
Aliexpress等の格安中華通販でのlipoは初手から膨らんでいるなどの話を聞くのであまり使いたくない…。
ちなみにリポの電圧や最大出力電流は以下のリンクらを参照してください。
これで自分の機体に合ったリポが選べるはずですね(ホンマに?)
レギュレータとDCDC
2cellのリポを選ぶと電圧は概ね7.4V、フル充電だと8.3Vぐらいです。
ではそれをどうやって5Vや3.3Vに落とすかというと降圧ICを使います。抵抗分圧という方法もありますが、まあ以下の2つを使うのが安パイです。
- レギュレータ(LDO)
- DCDCコンバータ
まずレギュレータについてです。これはシンプルで入力の電圧を目的の電圧にまで引き下げてくれます。(5V出力用のレギュレータなら5V出してくれるし、3.3V出力なら3.3V)
電流量はICごとに決まっていますが、大体はmAオーダーです。利点としては、データシート通りにコンデンサを付ければ電圧出力が安定しているのでマイコン等のロジック部分の電源供給に適しています。
ただ原理としては入力から出力で発生するエネルギーの差を放熱しているため、大きな電圧差を落とすと効率が悪いというデメリットがあります。
続いてDCDC。こちらはレギュレータらに比べて高い変換効率が魅力です。電力をそのままに昇圧・降圧が可能な部品となっています。電流に関しては数Aで流せるし、ものによっては10A単位で流せたりします(強い)
LDOでは難しい高電流を供給できる点で便利です。出力電圧はモジュールなら可変抵抗で調整できたり、素子自体で定まっていたりします。ただし、電圧自体は振れ幅があってロジック部分に供給するには不安です。
それぞれで特色が強いですが、DCDCで電圧を近くまで落として、ロジックにはLDOを使うと効率が良くなりそうですね。
使い方に関しては、各素子のデータシートに記載されているコンデンサをちゃんとつければ機能します。このコンデンサは、本来直流のみになるはずなのに交流成分が混じってしまうリップル現象を抑えるためのものなので、電気容量はちゃんと守りましょう。
リップル現象については以下のリンクを参照に。
例えば秋月さんでお世話になるレギュレータだと大体データシートや回路がまとまっているので選びやすいですね。ただし調整機能回路とかが必須な素子もあったりするので気を付けてくださいね。
データシートは神です、必ず目を通してください。
人間は愚かなので過ちを繰り返すのだろうけど…
モータードライバーIC
DCモータで機体を動かすには回転方向を変化させる回路が必要ですね。シンプルなブラシ付きDCモーターならHブリッジ回路で自作する方法もありますが、始めてだったら落ち着いてモータードライバーICを使うのがベターかと思います。
自作のモタドラはデッドタイム等の問題でFETを適切に設定しないとFETが燃えたり、回路が焼き切れたりとそれまでの進捗を吹っ飛ばす案件が多くなるので、交換が効かないマイクロマウスではデメリットが多いと思います。
電流量を稼ぎたくなったりしたら自作も検討してみてください。
さて、ICなのでよくある型番を紹介すると、TOSHIBAさんのTB6612FNGは有名で使用実績の多いICですね。1つのICでモーターが2つ回るのは強いですね。
電流量が多めで勝負したいなら次のもおすすめですね。あんまり使ったことはないですが、信頼と実績のTOSHIBAさんですので使用を検討しています。
あとは3cellを入力しても使えるような強力なものもいいですね。ROHMさんのデバイスもモタドラでは候補に入ってくると思います。
Texas Instruments 社のDRVシリーズもお世話になっている方が多いのではないでしょうか?モジュール化してるので交換が楽だったりしますね。
どうやってこれらのICを選定しているの?って話ですが人によってレベルはそれぞれと思います。
最初のころはそれこそ、入力電圧が適正であればヨシ!って感じでした。次は出力電流が大きいほうがいいだろうとデータシートを見始めたりしてましたね。そこから、熱による電流量の影響であったり、入力信号に対する応答性であったりを比べたりしています。
まぁ、好きなように選んでみるといいかもです。結果的に少ない電流でも機体が動くことはできると思います。最大速度や加速度の追及が始まると気にする必要があるって感じです。
素子自体はどんどん更新されていき、運用する中で不満な点が見つかっていくと思うのでどんどん新しいのに挑んでみてください。大きな経験になると思います。
モーターの電流消費
モーターはマウスの中でもひときわ電流を使う部品です。
特に、高い加速度が生じる瞬間に一際電流量を消費するため、加速時や減速時はかなり大きな電流を使うはずです。
この瞬間消費電流は計測してみるとものすごく大きいです。また消費する電流を放出できる電源でなければ、供給電圧が一瞬だけ非常に小さくなってロジック部分がリセットされる現象が起きます。
しかし、この対策のためだけに質量の大きなLipoを使うのは避けたい。そこで、壁センサ発光回路と同様に、コンデンサを付けることでその一瞬の電流量を賄おうという思想があります。
そのコンデンサどこに付けるの?
まあ電流を沢山使うのはモーター自身ですが、それを制御するのはモタドラ回路なのでモタドラ回路の電源供給辺りに大きめのコンデンサを突っ込むと良いです。
ただこれによりどこまで補えるかは計測実験やっていないので何とも言えないです…。
ボクはDutyを6割以上使ったことがないので効能も分からないです…。
制御や機能がある程度充実するまでは出力限界には挑まない主義ですが、将来的には問題になると思っています。
今回はここまでです。
電源とか電流ってちゃんと考えるともっと闇深いんですが、少し触っても大変なことが多いです。しかも間違えるとすぐに基板や素子が逝くので精神によくない…。
ボク自身も大変苦しんだので、苦しむ人が少しでも減ってくれれば嬉しいです。
それでは、また。